不動産を含む遺産分割協議は、不動産取引と同様といえるほど注意すべきことが多々あります。
一例ですが、遺産分割協議書の作成においては次のような点にも十分気を付けなければなりません。
◆不動産の表示は登記簿の記載と合っているか。
税務上の固定資産課税明細等の表示では、所有権移転登記の際に記載が足りない場合があります。
◆不動産を取得する相続人の目的にあった不動産か。
代償分割の場合や他の相続人が現金を多く取得するときは特に気を付ける必要があります。売却目的で取得したのに売却できない不動産であったり、建設目的で土地を取得したところ、法令に適合しない土地であったりした場合、取得した相続人の不利益となってしまいます。
◆余計な課税関係が発生する記載になっていないか。
例えば「不動産の代償分割」の場合、その旨の記載を協議書に盛り込まずに代償金を支払った場合、代償金に贈与税が課税されるおそれがあります。
◆押印と署名は適切か。
不動産のある遺産分割協議書は、登記の必要上、必ず実印を押印し、印鑑証明書を添付することになります。
署名も、事情のない限り本人の自筆であることが望ましいです。(後々の争いとなる可能性が出てきます)
下手であったり字が震える場合でも、書ける場合は本人の自筆署名が適切です。
印鑑については印影がハッキリわかるよう押印します。にじんだり欠けたりした場合は、その横や、隣にもう1つ押印し直します。
◆他の不動産はないか。
相続人がわからない不動産があり、協議の中で出てこない場合もあります。
通常、被相続人が持っていた権利証や固定資産税の課税明細等で遺産となる不動産を確認しますが、権利証が見当たらず、課税も来ていない不動産は忘れられ協議がされない場合も多くあります。
心当たりのある市町村に対して「名寄帳」を請求する。
→山林や原野、畑などが判明することがあります。
判明している不動産の図面を調査する。
→忘れられがちな私道(公衆用道路)が判明することがあります。